世界最大規模の蓄電池システムで
再生可能エネルギーの普及拡大に貢献

2023年8月

キーワード:

大規模蓄電池システム

再生可能エネルギー

ONE TEAM

地域創生

2023年4月、当社グループが約5年の工期をかけて建設した「世界最大級の蓄電池システム」が、北海道・豊富町で商用運転を開始しました。同施設は国家プロジェクトとして北海道北部風力送電株式会社が推進する送電網整備事業の一環として建設されました。気象条件に左右されやすい風力発電の出力変動を緩和し、電力系統を安定化させる重要な役割を担っています。当社グループは、この実績に続き、複数の大型の蓄電池システム建設を受注し、調整力の拡大で社会課題の解決に貢献しています。

CHIYODA CORPORATION

プロジェクトマネージャー

鈴木 洋

エリア
プロジェクトマネージャー

足永 吉誕

アシスタントプロジェクトマネージャー兼
初代現場所長代理

奥島 康正

プロジェクトエンジニア兼
3代目現場所長代理

鈴木 浩吉

厳しい環境下、
One Teamでプロジェクトを完遂

完成した「北豊富変電所蓄電池システム」の蓄電容量は72万kWh。電気自動車に換算すると約1万台分に相当します。日本では最大(従来の18倍)、全世界でもトップ5に入る大規模施設です。
当社グループは一括元請けとして、この施設を構成する蓄電池、制御システム、受変電設備、大型建屋を含む設計・調達・建設(EPC)業務を担当しました。「大規模蓄電池システムは当社グループにとって未体験の世界。さらに、蓄電池メーカーとしても未経験の規模。しかし、ミッションを個別に分解して見れば、「建屋」「蓄電池」「電気」「危険物取扱い」・・・と、どれも当社グループが実績を持つ分野です。知見や技術を結集して社会実装を実現する「エンジニアリング」の力、これを当社グループは「共創」と呼んでいますが、その力を発揮すれば十分に対応できると考えました」とプロジェクト・マネージャーを務めた鈴木洋は語ります。

とはいえ、完成までの道のりは平坦ではありませんでした。風力発電に適した、いわゆる「風況」に恵まれた土地は、言い換えれば強風地帯。工事の序盤では強い風で作業できない日が続くなど当初から苦労が続きました。さらに冬場には最低気温がマイナス20度にもなる厳寒地であり、本格的な降雪シーズンに入る前に建屋を完成させる予定でしたが、例年より早く雪が降り出し工事は難航しました。

建屋工事の進捗管理を担当した鈴木浩吉には、今も強く印象に残るシーンがあります。「雪で作業が止まってしまったある日、ベテランの上司が自ら作業場の雪かきを始めました。慌てて私も続きました。これを見た工事業者の方々は『元請けの千代田がそこまでやるなら』と、ともに除雪にあたってくれたのです」。

参画するあらゆる人々がOne Teamとして力を結集する、今回のプロジェクトでは、さまざまな状況でこうした「共創」を推進し、数々の難局を乗り越えることができました。

エネルギー分野の知見を活かし
お客様の不安を払拭

当社グループがこの大規模プロジェクトを受注する決め手になった要素の一つが「安全性」でした。そこには石油プラントなど、高度な安全対策が求められるエネルギープラント分野で培った経験が活かされています。

エリアプロジェクトマネージャーを務めた足永は言います。「定置用の蓄電池は膨大なエネルギーが詰まった、いわばエネルギーの缶詰です。そこで当社グループはエネルギープラントと同様のリスクアセスメントを実施し、建物の設計面で徹底したリスク低減対策を取り纏めて設計・施工に反映させるとともに、当初は予定していなかった『本格的な消火試験』をお客様に提案しました。これまでの経験から、理論的には安全性が説明できても、その理論通りに機能することを実機で証明しておく必要があると考えたのです」。

消火試験の実施にあたっては、蓄電池メーカーや工事会社の協力のもと、本物と同じスケールの建屋を試験施設内に設置し、その中で蓄電池を発火させ安全装置の機能を確認しました。その結果、蓄電池自体には類焼性(燃え移って焼ける性質)がなく、万一発火しても大事故につながることなく迅速に消火できることを証明できました。この試験によって、関係者全員が安全性に確信を持つことができ、顧客からの信頼感と関係者間の一体感の醸成に繋がりました。

自然エネルギー活用による
地域創生をサポート

「北豊富変電所蓄電池システム」は、北海道の道北地域で進められる送電網整備事業の一部となります。2023年以降、既に道北各地に新たに建設された風車がこの送電網を通じて電力供給を開始しています。最終的には127基・出力540MW超の風力発電が連系されることで、北海道の風力発電の規模は2022年に比べ倍増し全国トップとなる見込みです。当社グループではEPC業務だけでなく、今後20年にわたって蓄電池システムの保守業務も担当。自然エネルギーの持続的な活用を支えていきます。

この国家プロジェクトは、「風」というエネルギー資源を地域の活性化にもつなげるという、新時代の「地域創生」のあり方を示す試みとしても注目を集めています。「それだけに完成が近づくと政府関係者や地方自治体トップ、電力会社トップなどそうそうたる方々が毎日のように視察に訪れ、コーディネートに奔走しました。延べにすると120団体以上、600人を超える視察者を案内しましたね」と、アシスタントプロジェクトマネージャーを務めた奥島は振り返ります。

さらなる自然エネルギー普及への
貢献を目指して

世界的な課題である気候変動問題の解決策として、さらなる活用が求められる自然エネルギー。当社グループは今後も、AI技術を活用した蓄電池システムの高付加価値化、風力発電と蓄電池を組み合わせた電力系統の構築などに挑戦し、自然エネルギーの社会への普及に貢献する事業を積極的に推進していきます。