事業等のリスク

(2023年6月22日提出の有価証券報告書【事業等のリスク】より抜粋)

 当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある
事項、及びそれらへの対応は以下のとおりです。

 当社グループは、これら事項の発生の可能性を認識したうえで、発生の低減に注力するとともに、発生した場合に
はその影響を最小限に抑えるべく可及的速やかな対応に努めています。

 なお、以下記載事項については、当連結会計年度末現在において認識したものです。

(a)景気動向、経済・社会・政治情勢の変動による影響

 世界的な景気動向や社会・政治情勢の変化、保護貿易・経済制裁・国交の状況、各国のエネルギー政策の転換、
原油・LNG・金属資源価格の市場動向等により、顧客の投資計画に中止・延期や内容の変更が発生する、或いは
顧客・パートナーの財務状況が悪化する等、当社グループの業績に影響を及ぼす場合があります。

 当社グループでは、経済・社会情勢の変動を注視しつつ案件実現性・受注確度等を見極めながら、受注活動を
行うとともに、顧客とのリスクの最適な分担を図っています。また、顧客投資計画の突然の中止・遅延といった
事態に備えるため、受注計画には常にバックアップ案件を織り込み作成しています。加えて、斯様な業績変動に
対応するため、新規分野を中心に幅広い分野でのEPC案件のスタディ業務に積極的に取り組んでおります。

(b)地震等の自然災害、ウイルスによる感染症、地政学リスク、テロ・紛争等の不可抗力

 地震、地球的気候変動による大規模降雨・洪水・台風等の自然災害や、ウイルスによる感染症拡大、テロ・紛争
等の不可抗力の発生により、工事従事者の生命への危険、機器資材の工事現場への搬入遅延、現場工事の中断等、
遂行中案件の工事現場或いは国内外の事業所において直接的又は間接的な損害発生の可能性があります。

 また、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻により全世界的に地政学リスクが高まり、世界経済を
巡る不確実性、経済制裁の応酬等のデカップリングの動きが更に顕在化することが懸念されます。こうした不安定
な世界情勢が、顧客及びジョイントベンチャーパートナーの財務状況悪化、サプライチェーンの混乱、機器資材費
等の高騰につながり、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、人命第一と安全確保を最優先に考えた常なる備えとして、危機管理セクションを設置し情報
の収集・分析を行うとともに、刻々と変化する危険地域の状況を把握し、適切な対策を講じるためにセキュリティ
コンサルタントを雇用するなど、危機管理組織を強化しています。有事の際には緊急対策本部を立ち上げ、顧客等
関係先と迅速に情報共有するとともに、適時に適切な対応策を実施することで、これらの危機事象発生に伴う影響
を最小限に留めるよう有事対応の手順を定めています。さらに、大規模地震等を想定したBCPを策定し、災害発生
時には即時の安否確認・スムーズな初動対応・優先業務を立ち上げられるよう、平時から訓練を重ねることで事業
継続力の向上に取り組んでいます。また、ロシア・ウクライナ情勢の影響については、最新情報を分析しつつ、
海外赴任、出張中の当社グループ社員の安全に十分配慮するとともに、他国にて遂行中の案件への影響を今後も
注視、対処していきます。

(c)パートナーリスク

 当社グループの事業領域では、案件の規模や複雑さ、リスクシェア等の事由により、パートナーとジョイント
ベンチャーを組成し、受注することがあります。パートナーの債務不履行や財政状態の悪化等が生じた場合は、
当社グループが契約上の連帯責任を負うため、当社グループの経営に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、協業を決定する際に、パートナー候補の財務状況等を分析するとともに、取引開始後もモニ
タリングを継続し、早期にリスクを発見できる体制を敷いております。

(d)機器資材費の高騰

 プラント建設では契約見積時と遂行発注時にタイムラグが生じます。そのため、昨今のロシア・ウクライナ問題
といった急激な社会情勢の変化を受けて、機器資材の価格が予想を超えて高騰するリスクに曝されています。特に
プラント建設で主要部分を占める鉄鋼製品の価格は原材料である原料炭と鉄鉱石の価格の変動に大きく影響を受け
ます。さらに、銅・ニッケル・アルミニウム・亜鉛などの市場価格の変動は予想し難いものです。また、原油価格
や保険料の上昇等により海上輸送費も大きく影響を受けます。

 当社グループでは、これらのリスクを回避し影響を最小化するために、市場動向の調査に加え、世界各地からの
購入先の分散を図るなどの調達先の多様化、競争環境の維持、機器資材の早期発注、有力な業者との協力関係構築
などの対策を講じています。さらに、世界的なインフレ進行による資機材・労務価格の高騰に対しても、顧客・
ベンダー・サブコントラクター等の事業パートナーやステークホルダーとの協議・交渉を通じて適切な対応を心が
けています。

(e)工事従事者・機器資材の確保困難

 プラント建設では、建設工事に必要な工事従事者などの人的資源の確保、工事に要するインフラ確保やサプライ
チェーンの寸断等により、機器資材の調達が計画どおりに進まないことにより、工程遅れが生じ、その回復のため
に追加費用を投入する場合があります。

 当社グループでは、国内及び海外においては労働力の逼迫する国や気候の過酷な地域での工事において、想定を
超える工事コストの高騰リスクに対し、モジュール工法の採用など建設手法の工夫や有力な工事業者・機器資材
供給業者との協力関係を基礎にして、これらのリスクの回避及び顕在化した場合の影響の最小化を図っています。

 また、新型コロナウイルス感染症以外の世界的な感染症や疫病の影響やストライキ等により工事中断を余儀なく
された場合には、顧客や現地関係機関と連携して適切な対応を取り、影響の最小化を図っています。

(f)気候変動による事業環境変化に関するリスク

 気候変動が社会に与える影響は地球規模であり、グローバル社会が共通して直面している最も重要な社会的課題
の1つです。当社グループは、気候変動の拡大に伴う物理的リスクと移行リスクによる顧客の投資環境や事業ポー
トフォリオが変化することで、当社の経営及び事業戦略に大きな影響を及ぼす可能性があると認識しています。

 このような中、複雑化・高度化する社会や顧客の課題を的確に捉え、解決していくために、各国のエネルギー
情勢や気候変動政策の見直し、法規制等を注視、及び政府、関係官庁、顧客等のネットワークから適時・適切に
最新の情報を入手し、経営計画を策定することで対処しています。

 一方、当社グループは、気候変動を新たな事業機会としても捉えています。脱炭素・炭素循環型社会実現に
向け、水素社会への移行の加速、LNGを含む低炭素エネルギー及び再生可能エネルギーの更なる普及といった当社
グループを取り巻く事業環境の大きな変化や、重要顧客の戦略見直し、及び当社グループにとっての新たな市場
機会の成長を踏まえて、2021年5月にアップデートした中期経営計画で、2030年のありたい姿として「事業ポート
フォリオの革新」を掲げました。

 複雑な制約・課題に対し最適なソリューションを提供する最適化力、設計を最適化し高い品質を保証するEPC遂
行力、及び基礎研究力とEPC知見を融合する新技術の社会実装力という創業以来の実績に裏打ちされた当社が培っ
てきた強みを活かして、水素社会をはじめとする脱炭素社会への移行を加速し、2050年のカーボンニュートラル
達成に貢献します。また、カーボンニュートラル貢献分野及びライフサイエンス分野の伸長や継続型事業の創出・
強化の両面で既存事業と新規事業の利益比率を50:50とすること、及びそれらの推進により、連結純利益300億円
以上を稼ぐ収益構造に変革を遂げることを目指しています。

(g)プラント事故

 当社グループが建設中の又は建設したプラントに、何らかの原因によって爆発や火災などの重大事故が発生し、
その原因が当社グループの責任と判断された場合は、損害賠償責任の負担等により業績に影響を及ぼす可能性が
あります。

 当社グループでは、このような不測の事態が発生しないよう、計画時の安全設計、建設現場での無事故・無災害
を最優先に品質管理・工事安全管理等について万全を期すことはもとより、適切な保険の付保、損害の負担にかか
わる顧客との合理的な分担を定めた契約条件の獲得などによりこれらのリスクの回避・影響の最小化を図っていま
す。なお、当社グループでは工事安全を確保するためのあらゆる取組みを“C-Safe”と名付け、その旗印のもと
安全文化の醸成に弛まぬ努力を注いでいます。

(h)為替レートの変動

 海外向け工事では、機器資材調達や下請工事代金の決済が顧客から受領する対価と異なる通貨で行われる場合が
あるため、為替レートの変動は業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、支出を予定する複数の通貨での工事代金受領や、為替予約の手当によって為替レート変動の
リスクを回避し、影響を最小化するよう努めています。

(i)コンプライアンス違反

 国内外でプラント建設を行うに当たり、当社グループの本社・子会社・事務所及び建設施工地が所在する国々・
地域の法令・規制に各々従う必要があります。それら法令・諸規制に違反する行為、若しくは疑義を持たれる行為
が万が一発生した場合には、プロジェクトの遂行や事業の運営に多大な影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、これら違反の防止、疑義を持たれる事の回避のため、集合研修やe-ラーニング等の継続的な
社員教育を通じ、人権尊重や贈賄疑念防止を含めて、事業遂行にかかる最新の法令・諸規制やルール等を遵守する
ことの周知徹底を図るとともに、常に国内外の関係当局や顧客をはじめとするステークホルダーの動向をタイム
リーに把握するよう努めています。加えて、CCO(Chief Compliance Officer:チーフ・コンプライアンス・オフィ
サー)を委員長とし各組織のコンプライアンス・オフィサーを委員とするコンプライアンス委員会、及びCCOを委員
長としグループ各社社長を委員とするグループ会社コンプライアンス連絡会を設置し、コンプライアンスへの対応
を確実に業務プロセスへ取り込んでいます。

(j)情報セキュリティへの脅威

 当社グループは、事業の遂行に必要な顧客や取引先情報を多数管理しているほか、技術・営業・その他事業に
関する秘密情報を保有しています。多くの基幹業務や商取引がITシステムを駆使して世界中の拠点で行われていま
す。重要な情報システムやネットワーク設備へのサイバー攻撃に備え、防御施策を強化しながらそのリスク低減を
図っておりますが、完全なリスク回避はできるものではなく、不測の事態により、システム障害、秘密情報の
漏洩、サイバー詐欺被害、重要な事業情報の滅失等が発生して当社の事業へ影響を与える可能性があります。さら
には、ロシアによるウクライナ侵攻を境に、一般企業がサイバー攻撃に巻き込まれるリスクはますます高まって
います。

 当社グループでは、本社はもとより主なグループ会社でISMS認証を取得して、定期的な教育や監査等の情報
セキュリティマネジメントを徹底し、これらのリスクの回避・影響の最小化に努めています。

(k)事業投資にかかわる損失

 当社グループは、新会社の設立や既存の会社の買収等の事業投資を行うことがあります。その事業投資において
多額の資本拠出や投資先に対する貸付・保証等の信用供与を行う場合がありますが、事業環境の変化等により、
投資先の収益が当初計画どおりに上がらない、業績の停滞等に伴い投資にかかわる損失が発生する、又は投融資の
追加が必要となる事態に直面する、などのリスクがあります。

 当社グループでは、社内基準やルールに基づき事前検討を十分に行うことに加えて、損失リスクに相応する当社
グループの財務許容力を慎重に見極めたうえで投資の可否を決定しています。さらに実行後は投資先の事業計画の
進捗をモニタリングしつつ、必要に応じて要員、資金等の各種支援を行うことにより、損失の回避や軽減に努めて
います。