環境技術開発

技術開発への取り組み

創業時の理念「技術による社会への奉仕」を念頭に、経営会議直轄の技術戦略員会を設置し、エネルギー、環境関連技術の研究開発、実証化、商品化や知財活用に取り組んでいます。エンジニアリング企業の利点を活かし、プロセス開発、設計、システム解析と一体となった研究開発体制をとり、自社技術開発のみならず、顧客、技術オーナー等との協業により環境関連技術について、各時代の社会要請に基づき実証化を行い、商業化し課題解決を目指してきました。これからも、気候変動への対応や、脱炭素化社会の実現を始めとした新たな課題の解決に貢献します。

技術開発取り組み事例

技術戦略委員会では、様々なテーマを評価、選定し、技術開発に取り組んでいます。代表的な事例として、公的機関等の事業に参画して実施している技術開発テーマを以下に紹介します。

①省エネルギー関連技術開発
高機能触媒、高機能膜をベースとし、従来のプロセスと比較して飛躍的に省エネルギーが期待できる新プロセスの開発を目指しています。  
 ・ゼオライト触媒を用いた高付加価値オレフィン製造プロセスの開発(NEDO*1)  
 ・ゼオライト膜を用いた天然ガスからのCO2分離プロセス開発(JOGMEC*2

②蓄エネルギー関連技術開発
地域的、時間的偏在の問題を抱える自然エネルギーをより効率よく有効に使用するためのエネルギー貯蔵、輸送技術の開発を実施しています。  
 ・有機ケミカルハイドライド法による水素貯蔵、輸送技術の開発(NEDO)

③炭酸ガス固定化、有効利用技術開発
炭酸ガスを効率よく分離し貯留する技術、さらには炭酸ガスを有効な資源に転換する技術開発を実施しています。  
 ・環境配慮型CCS実証事業(環境省)  
 ・異なる電極活性点を利用したCO2からのC2化合物製造技術およびシステム開発(NEDO)

*1:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (New Energy and Industrial Technology Development Organization)
*2:独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (Japan Oil, Gas and Metals National Corporation)

インドの大気汚染防止の取り組み

住み続けられる街づくりを 気候変動に具体的な対策を

住み続けられる街づくりを 気候変動に具体的な対策を

インドの発電所の発電能力は約356GW (2019年3月末時点)で、そのうち54.6%を石炭火力が占めています。高度経済成長に伴う大気汚染が深刻化しており、火力発電所等から排出される硫黄酸化物の除去が大きな社会要請です。安価で安定した価格の石炭へのニーズは根強く、2030年においても石炭火力の占める割合は、40%である とも言われています。
当社は、自社開発したCT-121排煙脱硫プロセスに関し、2016年にインドの大手重工メーカーであるLarsen &Toubro社(L&T社)と技術供与契約を締結し、インド国内への大気汚染防止技術の普及に取り組んでいます。
現在L&T社が受注した8件の排煙脱硫装置へのライセンス供与を通して、インドの大気汚染防止へ貢献していきます。

CT-121完成イメージ

CT-121インド向けライセンス業務におけるインドでの遂行中案件マップ

千代田の環境技術

未来をつくる千代田のエネルギー・環境技術 豊かな社会の実現に貢献する千代田の変遷

千代田の環境技術

CO2リフォーミング触媒 (CT-CO2AR®触媒)

合成ガス*製造技術は、天然ガスを原料とする、常温・常圧の液体であるナフサ、灯油、軽油などの製品を生産するプロセス「GTL」*2におけるキーテクノロジーです。常温では揮発性が高く、空気より軽い天然ガスは、産ガス国から輸送する際に -162度まで冷却して液化した後、LNG専用タンカーで輸送する必要があります。また消費国においては、専用の陸揚げ施設と再気化プラントが必須です。
一方、GTLは、常温・常圧で液体であり、輸送や供給に必要なインフラとしては、既存のタンカーやガソリンスタンドを活用できます。千代田は、このGTLの源となる合成ガスの新しい製造方法を実現する「CO2リフォーミング触媒」の独自開発に成功。多くの中小ガス田に高濃度で含まれるCO2を、合成ガスの炭素源として有効に利用できる技術であり、GTLを高い効率で製造できます。

  • 1:「合成ガス」:炭化水素を原料として製造される水素(H2)及び一酸化炭素(CO)を主成分とし、残りの成分として二酸化炭素(CO2)やメタンを含有し、アンモニア合成、メタノール合成、オキソ合成、或いは水素製造等に用いられる原料ガス。
  • 2:GTL (Gas to Liquids) 技術:天然ガスから合成ガス(水素+CO)を経由して液体炭化水素を合成する技術

CCSシステム

CCS (Carbon dioxide Capture and Storage) とは、火力発電所などの排気ガスからCO2 (二酸化炭素)を分離・回収し、貯留サイトまで輸送し、
サイトの地下に圧入・貯留する技術で、地球温暖化防止策の有力な手法です。

CT-121技術

硫黄酸化物を含む排ガスが溶け込むことにより、強い酸性を示す雨が酸性雨。酸性雨は河川や湖沼、土壌を酸性化して生態系に悪影響を与えるほか、コンクリートや金属の耐久性を劣化させて、建造物や文化財にダメージを与えます。
千代田が開発した排煙脱硫装置「CT-121」は、少ない消費電力で工場から排出された排煙を高速で吸収し細かな気泡に変化させ、高い効率で脱硫します。この高い脱硫性能が評価され、石炭火力発電所向けに多く導入され、海外でも広くライセンス展開しています。

2016年11 月に当社はインドLarsen & Toubro社とライセンス契約を締結しました。Larsen & Toubro社への技術伝承を行い同技術が利用されることで、インドの環境改善に貢献することが期待されています。

SPERA水素®

有機ケミカルハイドライド法を用いた独自の水素貯蔵輸送の技術。
水素をガソリンの主要成分であるトルエンに固定すると、常温・常圧で取扱いやすいメチルシクロヘキサン(MCH)という液体になります。千代田が開発した脱水素触媒を用いて、MCHから再び水素として取り出す実証試験に成功しました。貯蔵や輸送が難しく、燃焼・爆発しやすい水素を、超低温で液化したり、ボンベで圧縮したりすることなく、低コストで消費地への長距離輸送ができます。また、消費地での大量貯蔵が可能となり、他の液体燃料と同様の利用も夢ではありません。
水素は他の燃料とは異なり、燃焼の際に発生するのは水だけで、CO2は全く排出されません。究極のクリーンエネルギーと言われ、国際的にも非常に注目されています。特に、国際エネルギー機関(IEA)からも「水素の大量貯蔵・輸送技術は千代田の技術だけ」との高い評価を得ています。世界でただ一つの技術によって、エネルギー社会の構造に変革をもたらします。

CT-HBT触媒 

ガソリンおよび軽油中の硫黄分の削減(サルファーフリー化)は、大気汚染物質の排出抑制に繋がり、環境負荷の低減に大きな役割を果たしています。当社は、留出油(灯油・軽油等)向けの水素化脱硫触媒として、チタニア触媒の反応優位性とアルミナ触媒の素材としての優位性を併せ持つ斬新なハイブリッドチタニア触媒(CT-HBT触媒)を自社開発し、商業一号機として西部石油株式会社殿の既設 灯/軽油水素化脱硫装置へ導入致しました。本装置は2014年の1月のスタートアップから、現時点(2016年8月)においても、LCO(Light Cycle Oil)* 混合軽油/灯油のブロック処理で安定した性能を発揮しています。CT-HBT触媒は高い脱硫活性を有するため、難脱硫性のLCOを付加価値の高い軽油製品へ転換することが可能です。例えば、FCC(流動接触分解装置)で副生するLCOは、脱硫が困難であったため、これまで重油の希釈剤としての利用に限られていましたが、CT-HBT触媒を用いることで付加価値の高い軽油製品への転換が可能です。当社は、上記実績をベースに、CT-HBT触媒の積極的な展開を進め、環境負荷の低減を目指してまいります。

*減圧軽油や残油を原料に流動接触分解装置(FCC)にて得られる分解軽油。