水素

最適な技術の組み合わせによるソリューションを提供し、水素社会の早期実現に貢献

カーボンニュートラルの実現に向けて鍵となる水素。水素は、次の特徴を有していることから、次世代エネルギーとして導入が期待されています。

特徴1

燃やしても二酸化炭素(CO2)を排出しないこと。

特徴2

再生可能エネルギー、石油や天然ガスなどさまざまな資源から「つくる」ことができる。

特徴3

さまざまなカタチで、「はこぶ」「ためる」ことができる。

特徴4

発電や車・バスなどのモビリティの燃料、石油化学や鉄鋼など幅広い産業分野での原料・熱利用など、日常生活のさまざまな場面で「つかう」ことができる。

世界中で水素導入に向けた取り組みが進められています。日本政府の「水素基本戦略」においても、水素等導入目標を2030年300万トン/年、2040年1,200万トン/年、2050年2,000万トン/年程度と設定、水素社会の実現に向けた取り組みを加速するとされています。

当社グループは、水素が長期的・安定的かつ大量に供給され、社会のさまざまな分野で利用される水素サプライチェーンの構築に向けて取り組んでいます。水素そのものをつくる「大規模水電解システム」の開発の他、MCH(メチルシクロヘキサン※)を用いて水素を常温・常圧の液体の形で安全に輸送し、既存の石油タンクなどのインフラを活用して貯蔵することが可能な当社グループ独自技術を始め、最適な技術の組み合わせによるソリューションを提供することにより、水素社会の早期実現に貢献します。

  • 水素を輸送する液体有機水素キャリア(LOHC:Liquid Organic Hydrogen Carrier)の一つ。MCHは常温・常圧で取り扱うことが出来る液体で、医薬品などの製造における溶剤など幅広く使用されており、水素ガスと比べると体積当たり530倍の水素を含んでいるため、効率よく安全に水素を運ぶことが出来ます。

当社グループが描く、未来の水素コミュニティ

カーボンニュートラルの実現を目指す世界として、当社グループが描く未来の水素コミュニティの姿です。水素が新たな資源として位置づけられ、水素を大量かつ安定的に「つくる」「はこぶ」「ためる」「つかう」ことができるサプライチェーンが構築されています。

当社グループが描く、未来の水素コミュニティ
さまざまな資源から水素を「つくる」とともに、潤沢なクリーンエネルギー源を有する国や地域と、エネルギー転換を推進する国や地域を結ぶルートやインフラを構築し、水素をいろいろなカタチで「はこぶ」「ためる」ことができます。
当社グループが描く、未来の水素コミュニティ
産業集積地や日常生活に至る社会のさまざまな分野で、水素を「はこぶ」「ためる」「つかう」ことができる水素コミュニティが実現します。

水素サプライチェーン構築に向けた取り組み

当社グループは水素サプライチェーンの構築に向けて、水素を「つくる」「はこぶ」「ためる」「つかう」ための多面的な取り組みを推進しています。以下に主な取り組みをご紹介します。

水素を「つくる」

大規模水電解システムの開発

トヨタ自動車株式会社と共同で、大規模水電解システムの開発を推進しています。トヨタ自動車株式会社が持つ燃料電池技術を用いた水電解セル・スタックの生産や量産技術と、当社グループが持つプロセスプラント設計技術や大規模プラントの建造技術を融合・最適化することにより、競争力のある大規模水電解システムを開発することで、急激に拡大する国内外の水素製造市場に対応します。

  • グリーン水素の生産に必要な水電解システムのコストダウン、生産効率アップ、品質安定化などを実現していきます。
  • 顧客のさまざまなニーズに対応できるよう、世界最小レベルのサイズでありながら、水素の生産効率の高い5MW-10MW級を原単位(設置面積:2.5m×6m、水素製造能力:約100㎏-200kg/時間)としたシステムを開発し、それらを組み合わせて標準パッケージとすることで大規模な水電解システムを構築します。
  • 2025年度からトヨタ自動車株式会社本社工場の水素パーク内に水電解システムの導入を始め、将来的には20MWまで拡大し実証や開発に活用していく予定です。

日本政府の「水素基本戦略」で掲げられている目標である、2030年までの日本関連企業によるグローバルでの水電解装置導入15GWの達成に貢献します。国内外における水素の製造、供給体制構築への関与により、エネルギー安全保障にも貢献します。

共同開発による水電解システムのイメージ
水電解装置
水電解装置
(高集積化されたトヨタ製水電解スタック群)
大規模水電解システム
大規模水電解システム
(当社グループによるスマート・スケーラブルエンジニアリング)

メタン熱分解による水素製造

豪州のHAZER GROUP LIMITED(Hazer社)と共同で、Hazerプロセスを用いて、メタン・バイオガスを原料に、メタンの熱分解により、水素とグラファイトを同時に生産する開発計画で、中部圏における技術・経済性の検討を進めています。2020年代後半に実証試験の開始を目指しています。水素生産能力は年間2,500トンから最大で年間1万トンの規模となる予定です。最終的には年間5万トンから10万トンの水素製造能力を目指します。

メタン熱分解による水素製造

水素を「はこぶ」「ためる」

世界初国際間水素サプライチェーン実証事業

MCH(メチルシクロヘキサン)による世界初となる国際間水素サプライチェーン実証を2020年に完了しました。
この実績を活かして、国際間水素サプライチェーンの構築を進めています。

世界初ケミカルタンカーによるMCH海上輸送

2022年2月に世界初となるケミカルタンカーによるMCHの海上輸送を成功裏に実施しました。

世界初ケミカルタンカーによるMCH海上輸送

水素を「つかう」

SPERA水素を日本国内初のガスタービン発電燃料として供給

世界初となる国際間水素サプライチェーン実証では、ブルネイからMCHの形で輸送した水素を日本国内初の発電利用として、2020年に東亜石油株式会社京浜製油所の水江発電所のガスタービンに供給しました。

分散型水素供給

  • 都市・地方における水素の分散供給の一つとして、2016年度~2018年度にNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業として、オンサイト水素ステーションの実証を行い、脱水素装置の小型化を実現しました。
  • この実証を活かして、シンガポールでは、MCH小型脱水素パッケージを用いた輸入水素の分散型利用の適用例としてPSA Singapore社Pasir Panjang Terminal にて、2024年前半に港湾内作業用FC大型車への輸入水素充填実証運転を開始しています。
分散型水素供給

将来的な水素の利活用

  • 発電、モビリティの燃料、水素還元製鉄や石油化学など幅広い産業での原料・熱利用をはじめ、さまざまな場面において利活用が期待されています。
  • 大規模エネルギー備蓄としてMCHのままタンクに貯蔵され、必要な時に水素を取り出して利用されます。

水素供給コストの低減に向けた取り組み

水素社会の実現に向けては、既存のエネルギー価格に比べて高い水素の供給価格を低減させる必要があります。日本政府の「水素基本戦略」では、水素供給コストについて、現在の100円/Nm3を2030年に30円/Nm3、2050年20円/Nm3とする目標が掲げられています。当社グループは水素供給コストの低減に向けてサプライチェーン全体の最適化や技術改良、新たな技術の実用化などを通じて水素社会の実現に貢献します。

事業紹介