洋上LNGプラント、すなわちFLNG (Floating LNG)とは、LNG貯蔵装置を有する船もしくはバージの上にLNG製造と出荷設備を持つものを指します。これにより、海洋ガス田から産出される天然ガスの精製、液化(LNG生産)、貯蔵、さらに輸送用のLNG船への出荷を洋上で一貫して行うことが出来ます。そのメリットとしては、陸上LNGプラントと比較して海底パイプライン敷設距離を低減できることや、沿岸部の開発を伴わないためインフラおよび環境負荷を低減できること、さらにガス田や陸上LNGプラントが開発される国や地域に関係なく、設備や環境が整った場所で建造することができ、建設の効率性と安全性を確保できること、などが挙げられます。
昨今のLNG価格の低迷により、より安価で短納期なLNGプラントが市場から求められている中、FLNGに対しても新しい知恵と工夫に取り組んでいます。FLNGは天然ガスのガス組成、生産規模、海象条件、At shore/Near shore/Open Seaにどう配置するのか、などによって様々な設備構成や仕様を最適化して経済性を上げることが重要であり、FLNGの設備は一様ではありません。千代田はそのフルラインアップに対応している数少ない企業であり、様々なお客様のニーズに的確に応えることができます。契約形態もリースを含めて柔軟に対応いたします。FLNG以外の設備(例えばGBSやJacketなどをHullの代わりに使う)も必要に応じて検討対象として最適化を図ることが可能です。
また、船上という制限されたエリアでの操業員の安全確保のため、プラント内での爆発、火災、漏洩などに対しては、FLNG特有の安全設計・解析手法を用いています。
千代田はこれまでに数多くの陸上LNGプラントの設計・建設実績のみならず洋上プラントの設計実績も有しており、これらのノウハウを生かしつつ、新技術を開発・導入し続けることで、時代の変化や要望にいち早く対応してまいります。
主な事業・技術
千代田は以下の要素を組み合わせることにより、より安全でより低コスト且つより短納期なFLNGの実用化に向けた提案を行っています。
1. 天然ガスの性状およびFLNGの規模に合わせた適切な液化プロセスの選定
千代田は世界No.1 LNG コントラクターとして様々な液化技術のオプションを有しており、それぞれのプロジェクトに最適な液化プロセスを選定します。
例えば、年産50~200万トンクラスの、比較的リーンな天然ガスを扱うFLNGに対しては、以下のメリットを考慮し、液体冷媒を使用しない液化プロセスを推奨することもあります。
<メリット>
- 液体冷媒貯蔵システムが不要
- 船上プラントでの液体冷媒の生産設備もしくはインポート設備が不要
- 船上プラント中の液体冷媒保有量が少ない故に、可燃性物質の総量を大幅に低減
- 極低温冷媒の漏洩リスクが少ない
- 液体冷媒を使用するFLNGと比較してコンパクトで低重量
これに限らず、千代田の豊富なLNG液化技術のラインアップの中から、そのプロジェクト毎に最適な液化プロセスを採用することができるのが千代田の利点です。
2. それぞれのFLNGに合致した建設工法の採用
一般的に新造のFLNGでは、船体およびLNG貯蔵システムの建造に時間がかかるため、プラント部分を大型のモジュールに分けて船体建造と並行して陸上で建設し、船の上に搭載することにより、搭載した後の作業を最小限にでき、低コスト且つ短納期を実現します(モジュール工法) 。新造のFLNGでは、船体を円柱形にして係留設備を簡素にして経済性を大きく高め、厳しい海象条件でも安定運転が可能なオプションも千代田は有しています。新造船は中型から比較的大型の厳しい海象条件のOpen Seaに採用することが多い。
中古船の改造は、中古のLNG船を改造利用することで船体およびLNG貯蔵システムの新規製造を不要とし、LNGプラントのみをLNG船体に付加(増設)する建設方法であり、新造船より短納期および低価格を実現できます。船体およびLNG貯蔵システムにかかる工程を最小限にして早く終えることができるため、機器単体または小型のブロック(モジュール)で船に搭載し、船の上での作業を効率化することによって低コストと短納期を実現します(ハイブリット工法)。 中古船の改造は、中小のNear shore, At shoreあるいは比較的静穏なOpen seaでのFLNGに採用でき、プロジェクトの経済性を向上することに大きく寄与します。
また、新造船の建設方法の一つとして、船の建造場所とは別に非常に広い建設場所を確保できる場合には、超大型の台座(スキッド)の上にプラントを建設し、船を岸壁に接岸した後台座ごと滑らせて船に搭載する工法を採用した実績もあります。(スキッド工法)
これらのように、千代田はプロジェクトの特徴に応じて最適な建設工法を提案してプロジェクトの経済性を上げます。当然ながら、それぞれの工法において更に設計などに工夫を重ねてより経済的なFLNGにいたします。また、建設工法に応じて、競争力のある製造ヤードを選定することができるのも千代田の特徴です。ヤードにおける工程管理は千代田の最も得意とするところであり、納期を守る信頼性の高いプロジェクト遂行を約束します。
3. FLNG固有の設計最適化
FLNGの経済性向上には上記の1、2項目が大きく寄与することになりますが、これらの他にFLNG固有の設計要素があり、これを効果的に解決することもプロジェクトを成功に導くうえで重要です。千代田は詳細設計の深さと細かさでFLNG設計を終了している実績に裏打ちされた解決策を提案できます。世界的に定評ある、千代田の卓越した設計技術を集結して品質の高い設計を実現します。
例えば以下の要素が代表的なものです。
- 船体の揺れを考慮したシステム設計、機器設計、構造設計
- 爆圧解析結果を反映した機器設計、構造設計
- LNGおよび液体冷媒の漏洩対策を考慮した設計
- 運転性、保守性を考慮した設計
- 船体設備とプラント設備の融合を考慮した設計
- 大容量フレアシステムの設計
- ヤードでの製造上の制約を考慮した設計
高度な解析を伴うものもありますが、それぞれを個別に考慮したのでは全体として冗長な設計となってしまうので、全ての要素をバランスよく満足するコンパクトなプラント設計を実現することがプロジェクトの経済性の向上と短い納期での確実なプロジェクト遂行を達成するうえで重要です。千代田はFEEDレベルの設計を行う過程で上記の要素を満たしながら様々な最適化のアイデアを提案することで全体モジュール重量を20%近く削減したこともあります。
4. マリン・コントラクターとの協業
FPSOの実績豊富な企業とパートナリングを組むことで、船体および係留設備や出荷設備の設計および特にオフショアでのプロジェクト遂行を万全なものとしております。パートナーとはお互いの強みを生かし最も魅力的で競争力があり、信頼性の高いFLNGの設計、遂行を実現します。また、リースによるFPSO契約の実績を豊富に有しているパートナーであり、FLNGにおいても必要に応じてリース契約を検討いたします。
主な実績
1.最近の千代田のFLNG実績
横にスクロールしてご覧いただけます。
PROJECT | CLIENT | LOCATION | SCOPE | AWARD |
---|---|---|---|---|
(Confidential) | (Confidential) | (Confidential) | Concept | 2017 |
(Confidential) | (Confidential) | (Confidential) | Concept | 2016 |
(Confidential) | (Confidential) | (Confidential) | Pre-FEED | 2016,17 |
(Confidential) | (Confidential) | Australia | Pre-FEED | 2015,16 |
Coral FLNG | Eni East Africa S.p.A | Mozambique | FEED | 2014 |
Jangkrik FPU | Eni Muara Bakau B.V. | Indonesia | FEED EPCI |
2012 2014 |
Scarborough FLNG | Esso Australia Resources Pty.Ltd. | Australia | Pre-FEED Optimization Study |
2012 2013 |
Abadi FLNG | INPEX MAsela,Ltd. | Indonesia | FEED | 2013 |
Petrobras FLNG | Petrobras Netherlands B.V. | Brazil | FEED Pre-EPC |
2009 2011 |
2.Eni Muara Bkau B.V.社向けJangkrik Floating Production Unitプロジェクト
以下の写真はFLNGではありませんが、千代田がパートナー企業であるPT SaipemとTripatraと共にJoint Venture Company STC JO (Saipem, Tripatra, Chiyoda Joint Operation) を組成し、2017年に完工・運転している洋上ガス処理プラントの出港(Sail Away)時のものです。PT Saipem Indonesia Karimun Branch (SKY : Saipem Karimun Yard)から出港しています。千代田は、FLNGと併せ洋上ガス処理プラントの設計・建設にも積極的に関与しています。
Eni Muara Bkau B.V.社向けJangkrik Floating Production Unitプロジェクト
- 概要 :
洋上ガス処理プラント(ガスおよびコンデンセートの分離・生産)
- 地域 :
Jangkrik and Jangkrik North (70km offshore East Kalimantan, Water Depth 450m), Indonesia
出典 : http://skkmigas.go.id/