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2018年度ステークホルダーダイアログ

明治大学 経営学部特任教授 関 正雄 氏

Interview 01

明治大学 経営学部特任教授 関 正雄 氏

千代田グループの今年のサステナビリティレポートは、昨年と比較して明らかに進化が見られます。企業の役割への期待が高まっているSDGsを事業戦略に組み込むという経営の意思も明確にされ、具体的な社内推進体制も新たに構築されています。
千代田グループは、エンジニアリング分野で培った強みを活かして、持続可能な社会の実現と企業価値創造とを同時に成し遂げる、極めて大きなポテンシャルを持っていると考えます。今年度のレポートで明確にしたSDGs経営への方向性を、今後も着実に進めていただきたいと思います。

評価すべき点

  • 1.

    サステナビリティに関する経営責任体制を明確化するために、CSO(Chief Sustainability Officer)を設置したこと。サステナビリティを経営課題として認識し、社内横断の重要課題に格上げして取り組んでいくことを社内外に明示したことは、大きいと考えます。

  • 2.

    脱炭素推進室を設置したことも同様に、特筆すべき点です。「低炭素社会」を超えた「脱炭素社会」の実現に、エンジニアリング企業としての自社の強みで貢献していくことを明確にしたことは、まさに御社のマテリアリティの認識として説得力があります。また、脱炭素社会への経営のコミット明確化は、他の企業にも影響を与える社会的に重要なメッセージであると考えます。

  • 3.

    安定的な食糧供給に資するドバイの植物工場デモプラントの事例は、今後世界規模で高まる社会的ニーズに応える可能性を秘めた、注目すべきソリューションです。こうした分野をSDGsに貢献するプロジェクトとして位置づけ、千代田グループならではの取り組みとして発展させていただきたいと考えます。

今後の取り組み強化が必要な点

  • 1.

    価値創造ストーリーをより説得力のあるものとするために、冒頭の概念図とそれ以降の開示情報とがどう関連付けられるのか、より踏み込んだ納得感のあるストーリー作りが必要です。また経営に組み込んで実践していることを示すために、長期目標を明確にし、指標を設定し、進捗状況を開示していくことが望まれます。

  • 2.

    人権尊重を経営に組み込もうという意図は感じられますが、国際行動規範としての求められている内容とは、まだ取り組み範囲や深さにおいて大きなギャップがあると考えます。人権尊重を新たに組み込んだ経団連企業行動憲章・同実行の手引きなども参考に、まずはギャップ分析を行うことをお勧めします。

  • 3.

    以上の取り組みを強化する上で、是非ともキーとなるステークホルダーとの対話・エンゲージメントを実施していただきたいと考えます。また、透明性を高めてそのプロセスや出された意見も具体的に開示することが望まれます。

獨協大学 経済学部教授 高安 健一 氏

Interview 02

獨協大学 経済学部教授 高安 健一 氏

エネルギーと環境の調和を経営理念として掲げる千代田グループは、SDGsの達成に真摯に取り組む姿勢を、2017年と2018年の「CHIYODA GROUP Sustainability Report」で社内外に示した。本業をSDGsの17の目標とマッピング(関連付け)したのに続き、2018年4月に経営企画本部にCSOを配置した。経営陣の目標達成への本気度が伝わってくる。

千代田グループが価値を創造するほど、地球は住みやすくなる

千代田グループは、経営理念、経営ビジョン、そしてCSRバリューの三層構造を基盤に、社会的課題の解決に向けた価値創造を加速している。さらに、10年後を見据えた3つの新成長領域である、エネルギー・バリューチェーン事業の構築、地球環境エンジニアリング事業の拡大、そしてデジタル社会対応・新ビジネスモデルの開発に注力する。中期経営計画(2017~2020年度)において、収益ポートフォリオに占める環境の割合を大幅に引き上げることを明らかにした。
筆者が、千代田グループが発信するメッセージのなかで最も惹かれるのは「総合エンジニアリング企業として英知を結集し研鑚された技術を駆使する」である。これが、創業以来のエネルギーと環境の調和という「相反する」テーマを両立させてきたイノベーションの源であろう。そして、課題解決に誠実に取り組む人材こそが、千代田グループの価値創造の源泉に他ならない。そう強く思う。
千代田グループへの期待を二つ記す。一つは、未来予想図を定期的に公表し、世論を喚起することである。例えば、脱炭素社会の実現は、SDGsの達成期限である2030年以降も重要なテーマであり続ける。誰かが「技術的裏付け」のある超長期的な未来予想図を示す必要がある。千代田グループは川崎市と工業地帯での「水素エネルギー利用推進プロジェクト」に取り組む一方で、2018年に脱炭素推進室を立ち上げた。産業界のみならず、地域や市民生活へのインパクトを、広く示して欲しい。このことにより、自社の価値創造をより広い視点から捉えるとともに、千代田グループとともに課題を解決することを望む人々を巻き込むことができよう。
もう一つの期待は、金銭的リターンと社会的リターンを両立させる仕組み作りである。世界的なESG投資の拡大とSDGsの浸透を背景に、投資家は金銭的リターンと社会的リターンの双方を意識するようになった。ただし、世界の課題を解決することから得られる社会的リターンが、金銭的リターンを犠牲にすることは容認され難い。この新たな「相反する」テーマを解決するためには、斬新な発想ができる若い人材、課題解決のためのさらなるイノベーション、そして地道な生産性向上が不可欠である。
SDGsは世界共通の目標として定着してきた。脱炭素社会の実現を始め、民間企業への期待はかつてないほど高まっている。千代田グループの価値創造は、国内外のグループ・ネットワーク、サプライチェーン、そしてバリューチェーンなどを通じて世界中の取引企業や地域に波及する。千代田グループが価値を創造するほど、地球は住みやすくなる。

ステークホルダーメッセージを受けて

IR・広報・CSR部長 中村 薫
IR・広報・CSR部長 中村 薫

2017年度に引き続き2018年度の本レポートへ貴重なご意見を賜り有難うございます。
グローバルな要請事項への対応としては、千代田グループとして「人権基本方針」「税務方針」を新たに定めました。持続可能な社会に向けた課題抽出と取るべき方策へのご意見については具体的な検討を進めています。
またCSOの設置と脱炭素社会の取り組みを推進する脱炭素推進室に対する大きな期待を受けて、技術と英知で社会価値を創出するエンジニアリング企業ならではの「技術的裏付けのある未来予想図」作りと、それを実現する経営戦略への統合を目指していきます。
引き続き専門的見地からの忌憚のないご意見を頂戴できれば幸いです。