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挑戦する
プロジェクト~パプアニューギニア LNGプラントプロジェクト~

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Courtesy of ExxonMobil
パプアニューギニア
Papua New Guinea

初めてのパプアニューギニア

パプアニューギニア(PNG)では1990年代より天然ガスの開発が検討されてきましたが、千代田化工建設がPNGにてLNGプラント建設プロジェクトに関わったのは2008年のFEED*1からです。FEEDに参加するにあたり、まずはPNGについて知ることからスタートしました。

現地における工事業者の有無や施工能力、港湾設備を始め建設現場までの輸送道路を含めたインフラの状況、現地の環境・衛生・治安、更には規制や慣習にいたるまで、調査項目は多岐に渡り、そのための調査団の派遣も数回行なわれ、さらには現地に社員を駐在させ、より詳細な調査も半年近く行ないました。

一年以上に及ぶFEEDを経て競争入札の末EPC*2の受注に至りプロジェクトがスタートしたのですが、ここからもチャレンジの連続でした。

Construction

建設現場へのチャレンジ

まず、プラント建設用地は第二次世界大戦当時連合軍の演習場として利用されていたため、多くの不発弾が埋まっていました。2009年12月にEPC契約をしてからも顧客による不発弾の調査・処理が続き、それが終わるまで1年近く現地での工事を始めることができませんでした。

さらには、熱帯性伝染病の危険もあり、予防と感染時の対策も欠かせませんでした。例えば、マラリア対策として、定期的に予防薬を飲んだり、その服用が励行されているか確認するために尿検査を行いました。また、媒介する蚊の発生を防止するため、居住地区や現場事務所廻りを中心に雑草の除去や水溜り対策を行ないさらに殺虫剤を散布するなど、様々な予防策を講じました。

このような現場特有の困難があるなか、労働災害防止も課題となります。本プロジェクトマネージャーの穴井は次のように語ります。

「2011年の秋~2012年の春にかけて、労働災害が半年の間に3件起きてしまい、何が問題なのか、他の海外建設現場を視察するなどしてそこでの安全活動も参考に、皆で模索しました。その結果、安全対策や安全教育の強化に加え、所員全員が積極的に現場に出て現場作業員とコミュニケーションをとることの重要性を再認識しました。ただし、一方的に話しをするのではなく、双方向でのコミュニケーションが必要なのだ、という結論に達しました。現場で少しでも不安全な行動や状態を発見したら、お互いに躊躇することなく自分の家族にするようにすぐに声をかけ注意する。このような活動を現場に広めることによって、作業員の側からも挨拶や声をかけてもらうのが当たり前になりました。そのような精神的な部分で安全意識を高めることで、延べ6,500万時間の無事故無災害記録が達成できたと思っています。」

建設現場へのチャレンジ
環境保全へのチャレンジ Courtesy of ExxonMobil
Environment

環境保全へのチャレンジ

PNGは国土の大部分を熱帯雨林に覆われ、固有の生物も多数生息しています。このような環境をできるかぎり保全することもこのプロジェクトの課題でした。

プロジェクトエンジニアの宗像もこう語ります。

「LNGの出荷設備がプラントから2.4km離れた海上にあるのですが、本来であれば、そこまでパイプを引くのにかなりの範囲のマングローブや珊瑚礁に影響を及ぼす懸念があるところ、これを最低限の範囲のみで済ませられる工法を採用しました。また、1万人を超える作業員の居住地区から排出される生活排水や糞尿の処理用に下水処理設備を設けて処理した後に海に流すようにしました。現場のごみは全て分別し、有害廃棄物はPNG国内では適切な処理業者がなかったためオーストラリアなど国外の廃棄物処理業者に送ったり、一般廃棄物は敷地内に廃棄場所を設けてそこに埋めたり、生ごみ処理機を導入するなど、様々な環境対策を施しました。
海の青さが工事前後で大きく変わっていないことはこのような環境対策の効果の表れだと思います。」

Technology

技術へのチャレンジ

今回採用した技術にも多くのチャレンジがありました。

穴井は「今回のコンプレッサー駆動用動力には航空機エンジンから転用したガスタービンを採用しました。航空機用ガスタービンは通常の工業用ガスタービンに比べて燃費が良く、CO2の排出も少ない。また、比較的軽くてメンテナンスにかかる時間を短縮することができます。しかし、我々の採用したプロセスでは実績がなかったため、すべてが新たな挑戦でした。例えば、何台もあるタービンをコントロールさせながら、コンプレッサーをスムーズに起動/停止させることが要求されました。これは、様々なシナリオを検討し、コンピューター解析を用いて、最適化したシナリオをコントロールシステムに組み込むことことにより、この要求を達成しました。その他、数多くのチャレンジも顧客を含めた関係者が一体となって乗り切り、結果、安定してLNGを生産し続けられるプラントが完成したのだと思います。生産開始して以来3年以上経過していますが、運転も安定し所定の能力以上の生産量が実現され顧客からも大いに満足をいただいています。」と語ります。

技術へのチャレンジ Courtesy of ExxonMobil

PNG-LNGチャレンジの集大成―
PNG-LNGプロジェクト

多くのチャレンジを経て、完成したPNG-LNGプロジェクト。社員や作業員一人ひとりの困難に正面から立ち向かう姿勢とあきらめない気持ちとが成功を導いたプロジェクトでした。

最後に穴井はこのような言葉を残しています。

「終わらないチャレンジはない。そして終わったときには、最高の快感を味わえる。人生の決して短くない時間をかける仕事なんだ。面白くないわけがないよ。」

PNG-LNGプロジェクト Courtesy of ExxonMobil
PNG-LNGプロジェクト